佃島

projetdelundi2008-01-06

12月30日のお昼ごろ、家を出ようとしたらちょうど雨が降ってきた。風邪を引きそうなほど寒いし風が強い。
古代ギリシア人は家を出るときに躓いたらその日はろくなことがない徴なので外出するのはやめたそうである。
というサボりのエピソードが頭に浮かんで、こういう寒い日は散歩に向いていないんだからあったかい家でゴロゴロするのがいちばんと思って引き返しかけた。
と、そのとき現実離れ原則を思い出した。人が絶対出歩かないような雨の日や寒い日にひと気ない荒涼とした場所へ出向いてこそ現実離れのできる風景に出会えるということを。
月島で有楽町線を降りて雨のなかを歩いた。下町らしい天然がかった商店とか長屋のような住宅とか立ち混じった通りを抜けるとちいさな川に橋がかかっていた。
わっと思った。
東京の他の場所では感じたことのない異質感がその橋の向こう側の土地にモヤのようにたゆたっていたからだ。
ひとつひとつの建物を見たら古い木造が多いというぐらいで特に異質な感じはないのだけど、ひとつの村のような緊密性によってその集落すべてが結ばれているような感じがあった。
ここは佃島である。江戸時代には隅田川の河口に浮かぶ島だったが、埋め立てが進んではるか沖合まで陸地になったので、いまは隅田川流域のひとつの町にすぎない。
漁船がもやってあるちいさな川によってかろうじて島の面影はたもたれている。
雨も降っているし年末もおしせまった一日でもあって、車の一台も通らない集落の街路はとても静かだった。