出窓からの風景

projetdelundi2007-10-28

また旧古河庭園の話。
写真では左側が切れてしまっているが、右の棟と左の棟をアーチとその上のバルコンが連結している、この屋敷の南側の姿がわたしは好きだ。
設計者のジョサイア・コンドルはもっともよく薔薇の見える2つの部屋を応接室と夫妻の寝室にあてている。
応接室は右下の部屋で、天井に白い漆喰で薔薇の彫刻が作り込まれている。
窓の一部には技術が未成熟だった大正時代のガラスが現存していて、色とりどりの薔薇が少し歪んで見え、浮かんだ気泡のなかには大正の空気が残っている。
刈り込んだつつじが描く幾何学模様を本当に楽しめるのは、出窓が張り出した左棟2階の部屋から見下ろすときである。
もっとも景色のいい部屋を夫婦の寝室に当てているのは西欧人らしいと思う。
施主の古河虎之助はこの家に9年しか住まなかった。
長屋暮らししかしらないわたしの想像に過ぎないが、貴族の奥さんとの生活は、感情を露呈しあうこともない、静謐だが寂しいものだったのではないか。
朝目覚め、カーテンを開け、朝日が差し込む窓からどんな気分で薔薇を見下ろしていたのだろう。