2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

溶ける

八芳園の結婚式場には日本庭園がある。友人の結婚式でもきたことがあるが、そのときは遅刻して、式のあとには酔っぱらって帰ったので、庭園のうつくしさに気付かないままだった。 すり鉢のような地形の底に池がある。すり鉢の土手の部分を渦のように巻きなが…

マリアに出会う

聖アンセルモ教会の壁面にも十字架の道行がかけられている。普通の教会にあるものとは少しちがっていて、鉄の彫刻によるものだった。キリストが犠牲となるまでの14の場面が抽象化されて描かれている。 例えば、イエスが衣をはぎとられる場面(第十留)は奪い…

聖アンセルモ教会

目黒の駅にほど近い、巨匠アントニン・レーモンド作の教会。 打ちっぱなしの分厚いコンクリートに遮られたこの空間はひんやりし洞窟のような印象を与える。 といっても表面はとても繊細に仕上げられていて、包まれ護られている感覚が同時に感じられる。 内部…

あった

虎太郎(1歳2ヵ月、11.6キロ)は「あった」という言葉をよく使う。床に落ちているおしゃぶり を拾いながら「あった」といい、帰宅した妻を指差し「あった」という。言葉の使い方としてまんざらまちがっているとも言い切れない場面で発せられるけれど、どこ…

国際フォーラム

オフィスビルが、レトロなのも超高層も、堂々としていることはどれも変わらずに立ち並んで、ひろびろとした並木の道を背広姿のひとたちが行き交う。 丸の内にくると、きまってもうひとつの人生を思う。ちょっとしたはずみでサイコロがちがう転がり方をしてい…

聖ルカ礼拝堂

聖路加病院の受付で礼拝堂の場所を尋ねると、 「2階に上がって、渡り廊下で本館へ渡ったところにあります」 といわれた。聖母マリアをモチーフとしたさまざまな時代の絵が掲げられた廊下を進んでいくと、現代的な病院の建物からいつのまにか石造りの古めか…

聖母病院

あらゆる場所に感動は潜んでいる。 以前ひいきのカフェへ行くときには何度も前を通っていた下落合の聖母病院。そのなかにはじめて足を踏み入れると裏側には古い礼拝堂があった。 会堂の内側にはステンドグラスを透かしてやってくる黄色い光が満ちていた。 病…

目白聖公会

1929年に建てられたロマネスク様式の教会。 暑い日だったけれど中に入るとひんやりしたのは石造りだからなのだろう。教会に足を踏み入れたときに独特の神聖な感覚はなんだろうとよく疑問に思うのだが、温度のような皮膚感覚も関係があるのかもしれない。 キ…

秘密

そこに空地があるなどと意識したことはなかったが、きのう通りかかると急に目に飛び込んできた。 たくさんの花が咲いて教えてくれていたのである。 家の近所という限られた空間のなかにどれだけ秘密が隠れていることだろう。秘密はずっと沈黙したまま日常の…

体温

2歳頃まではスキンシップがいちばん大事だという。妻が育児書で読んだことをわたしに受け売りし、それをまたわたしが受け売りしているのである。 その教訓を聞くまで、あんまりべたべたするのもどうかと思って遠慮していたが、これからは臆面もなくスキンシ…

日比谷公園

日比谷駅の出口の階段を昇っていると、かび臭さとモーターの熱が入り交じった地下鉄の空気に代わって、雨の前触れの湿った空気が地上から階段を滑り降りてくるのがわかった。 日比谷公園の木々も朝のうちの雨によって湿り気を帯び瑞々しい色をして、その色が…

寒天

桐生でところてんに目覚めた。 街道沿いに天草を木のざるで干している店を目にし、車を停めた。かみやという店である。 値段は160円。酢醤油で食べるのと、黒蜜で食べるのと二種類ある。いくらでも食べられる。つるつるっとしてぐにゃっとして噛むとほろっと…

ヴェロニカ

『聖書のなかの女性たち』という新訳聖書に登場する女性たちの生きかたを取り上げた本がある(単行本版の表紙はシャルトル大聖堂のうつくしい薔薇窓だった)。 遠藤周作はこういう意味のことを書いていた。 「あらゆる女性たちは聖母マリアとイブの中間に位…

世間体

虎太郎(1歳2ヵ月、)はよく鼻の穴に指を突っ込み、そのあと口にくわえる。鼻くそを食べているとは思いたくない。あくまで偶然だと思いたい。 虎太郎が鼻の穴に指を入れたり、保育所で毎回おかわりをしているところを第三者に目撃されて、「あそこのお父さ…

大萬

きのうのつづき。斉藤水産以外のもう一軒の築地の魚屋の話。 築地市場の奥深くへ分け入っった。コンクリートの屋根の広い広い空間がずっと広がって、狭い通路をたくさんの魚ケースをカートに載せたひとが忙しそうに行き交って、素人のわたしがこんなところを…

ドーム

きのうの魚屋の写真を見ていて思いだしたのが、カフェ・ドームである。ドームはかつてピカソが画家仲間と毎日のように集ったモンマルトルの由緒ある文壇カフェの一軒だ。 入口のところに生ガキや魚介類が置かれ、氷が敷かれたケースがあって、その場ですぐ食…

斉藤水産

今月のピクニッケは築地で買ったゴハンを浜離宮で食べる企画。 場外にある斉藤水産は築地初心者にもやさしい魚屋で刺身にも造ってくれる(5000円以上から[3〜4人前])。ピクニッケにうってつけ。 試食もあるし、たくさんの種類の魚を売っている。エビや…