2008-01-01から1年間の記事一覧

千鳥ヶ淵

千鳥ヶ淵へ一生懸命歩いたのは、きのうのパンをはやく食べたかったからである。 お堀の上を高速道路が走っていた。何時代だかわからない景色である。外国人が見たらもっと不思議だろう。ヴェンダースの『都市とモードのビデオノート』というヨウジヤマモトの…

半蔵門

話は雑司ヶ谷から半蔵門へ移る。川喜多財団へ映画の写真を取りにいったのである。過去の名作の写真を焼き増しして貸しだしてくれる。それは教会の本のなかでキリスト教に関する映画を紹介するためのものである。ロッセリーニ『神の道化師フランチェスコ』と…

すすきみみずく

すすきみみずくは雑司ヶ谷・鬼子母神の名物。飛び出したまんまる目玉がまるで宇宙人である。 なんでも江戸時代に病気の母を抱えた貧乏な娘さんが夢ですすきみみずくを見て、その通りに作って境内で売ったら大ヒットしたという伝説のおもちゃだそうである。い…

鬼子母神通り

11月30日の日曜日に行ったときは偶然にも鬼子母神通りで「みちくさ市」が開かれていた。定休日のシャッターが閉まった店の前に即席の古本市が開催されていたのである。この雑司ヶ谷周辺の古本屋あるいは、ネット上の古書店やなかには古本屋ではないひとも集…

いなり寿司

雑司ヶ谷二丁目商店街はしっとりとしている。住宅地のなかにあって、人通りも少なくて、店はどれも地味めで渋い。ざわざわした感じがなくていい。 古ぼけているばかりかというとそうでもない。とてもおいしいいなり寿司のお店があった。ごはんがよく炊けてい…

雑二ストア

雑二ストアという市場のような商店街のような闇市のようなものが雑司ヶ谷にあった。沖縄の市場によく似ている。このまえ長崎に行ったときにもこういう雰囲気の場所がいくつもあった。東京では荒川区のほうにいくとときどきある。 商店街というよりも民家が寄…

雑司ヶ谷の紅葉

2週間前のことなのでもう散ってしまったかもしれないが。 雑司ヶ谷は古い町でいろんなところに大きな木が残っている。鬼子母神参道のケヤキ並木。石畳の上に落ちた赤い葉っぱを掃き清め道ばたに集めたのを、虎太郎(1歳9ヶ月、12キロ)が大よろこびで踏んで…

雑司ヶ谷

副都心線という地下鉄の新路線ができた。いつ乗ってもガラガラで、夕方の込み合う時間帯でも座ることができる。この秘められた事実にみんな気づかないでいつまでも自分だけ座っていたいなどとセコいことを考えながら乗っている。 雑司ヶ谷にも簡単にいけるよ…

かぼちゃ

虎太郎(1歳9ヶ月、12キロ)の最近の散歩テーマはかぼちゃである。ハロウィン以来かぼちゃが大好きになってしまった。毒々しいオレンジ色と丸くてでこぼこの怪しい形、ケタケタ笑いする裂けた口、感情を伺わせない穴だけの目が、彼の気を無限にそそるようで…

あんぱん2

「パン・ラボ」では11個のあんぱんをそれが生まれた順に食べてみた。 パンにもいろいろあるけれど、それが発明された瞬間が記録に残っていて、しかもほとんど同じものがいまでも食べられるというパンはざらにはない。 そのうえ、読者の多くがそれを食べたこ…

あんぱん

ちょっと驚いたのだが、あんぱんはとてもうつくしいものである。 色がうつくしい。本物のあんぱんも、アンパンマン同様つややかに輝いててっぺんがハイライトになっている。かと思うとつや消しのざらっとした素焼きの陶器みたいなあんぱんもある。これはこれ…

パン・ラボ

11月17日発売の『パニック7ゴールド』で「パン・ラボ」という連載をはじめることになった。第1回はバゲットについて特集している。東京でもっともおいしいとされる12種類のバゲットを食べ比べてそれぞれにどういうおいしさがあるか比較検討するという内容。 …

浄化

軽井沢は浄化の場所である。軽井沢の父と呼ばれ、最初に避暑地としてこの地を見出した宣教師アレクサンダー・ショーは、軽井沢のことを「屋根のない病院」と呼んだ。 軽井沢へ行ってアウトレットや軽井沢銀座ばかり行くのはもったいない。繁華街からちょっと…

軽井沢

軽井沢でピクニッケするなら。 アトリエ・ド・フロマージュは、チーズ作りを思い立って夫婦でフランスへ修業に行き帰ってきて軽井沢の近くで牧場をはじめたのが起こりだそうで、名前に「ド」が入っていることも含めてプロジェ・ド・ランディにちょっと似てい…

旧古河庭園

今月のピクニッケ情報。 『東京ピクニッケ』で10月に取り上げたのは旧古河庭園だった。 きのう薔薇の見頃はいつごろか電話で問い合わせたところ「18日から」というタイムリーな返事が。11月いっぱいは薔薇が見られるように管理しているとのことだが、本当の…

キリスト教作家の小説を読んでいる。『母』は文庫本のコーナーでどれを買おうか迷っていて表紙を見て買った。 茶を基調にいろんな色が塗りこめられたざらざらした感じの地に「母」というピンク色の文字。「母」の下に「三浦綾子」とあるだけで聖母マリアを想…

21度

去年の年末、妻と子供が帰省しているときひとりで行ったパリ広場に、今度は妻と出かけた。 http://d.hatena.ne.jp/projetdelundi/20080107/p1 先週の木曜日は雲ひとつない秋晴れの日で、高く青い空と、隅田川の流れと、どこまでも見通していける河岸の景色が…

小坪

下手をしたら見逃すところだった。海岸に沿った道を歩いているとゴザを立て表からは見えないようにした倉庫か工場のようなところがあった。そこが目的地の市場だった。 ここで売られている魚はスーパーや近所の魚屋で見る魚とまったくちがう。目が充血してい…

鎌倉

鎌倉の駅にあったのはキオスクではなく加藤売店だった。あじさいの金平糖や大仏の形をした飴などが売られていた。 なんで鎌倉かといえば、いつものごとくのピクニッケである。 「鎌倉を生きて出でけん初鰹」 という芭蕉の句がある。季節外れの句だけれど、お…

ペタンク

芦屋川沿いの公園で重たい鉄の球を投げあっているひとたちがいた。 パリの公園でよく見かけたペタンクを日本で見たのははじめてのことだった。 ルールはカーリングに似ているだろうか。プレーヤーはそれぞれ2個の球を持ち、中心点に誰がいちばん近く投げら…

夙川公園

大阪と神戸のあいだにある夙川というところへ行った。ピンク色のゴシックの教会が住宅地にヨーロッパの雰囲気を振りまいている。至聖所では、聖テレジアという修道女の描かれたステンドグラスが、アールデコ風の祭壇と木の十字架を照らす。「幸せな人」とい…

まるき製パン所

京都は四条大宮の駅から細い路地をずっと南へ下っていく。古い木造の住宅がつづく。ときどき老舗らしき染物屋が見られる。ここは職人の町なのだろうか。 ひとびとの生活があるだけで観光客の目を引くものもなさそうな一見地味な町に、まるき製パン所はある。…

ボン・ボランテ

店の前に薪が積まれたパン屋が河原町通りにある。この薪は飾りではなく、土を固めて作った本物の窯にくべる。 店の名はボン・ボランテという。薪釜を見ただけで「この店はうまい」と自分のなかで決めつけてしまい、食べたくてしかたなくなった。最初にいった…

靭公園

ブランジュリ・タケウチは大阪の有名店。ドアの前にはガードマンが立っている。ひきもきらずお客が押し寄せるために交通整理をしているのである。 このパン屋に並ぶパンの形はモダンアートのようだ。球や四角などシンプルで普遍的であって、きっとおいしいパ…

オーボンヴュータン

東急大井町線の尾山台。よほどのことがない限りほとんど降りる可能性のない駅にオーボンビュータンはある。 ずっと行ってみたくてやっとたどりつけた。 駅前からいい感じの商店街をずっと歩いて終わりかけたところ。東京の中心からこんなに離れていて名店の…

小川の水面にしだれかかる紫の萩。これは去年のいまごろ撮った向島百花園の写真である。 百花園でピクニッケしたのは9月22日のこと。なぜ日付まで覚えているかというと、萩の満開の日を公園のひとに尋ねたら「9月22日」という答えが返ってきて、それが…

京都教会

イコンのかかった金色の壁、金色のシャンデリアが、時間の降り積もった薄暗い空間に鈍い光を放っていた。ハリストス教会(ロシア正教)のミサに参列するのははじめてのことだった。すべてが司祭と合唱隊が歌う賛美歌のかけあいによって進行していく。ロシア…

大阪教会

ヴォーリズが建築したレンガ造りの教会が大阪の中心部に残っている。大阪教会というプロテスタントの教会である。 教会役員をされているという、キリスト者らしさにあふれた親切なご老人に案内をしていただいた。1922年献堂というから築80年にもなるのに、中…

欲望

大阪でとても驚くのは商店街の猥雑さである。どの店も自己主張がものすごく、一直線につづく商店街のずっと先まで派手な看板が争い合い競い合って自分だけ目立とうとしているので頭がくらくらする。パチンコ屋やカラオケ店の店先からは歌謡曲が聞こえてくる…

ホホエミ

京都でもときどきピクニッケした。 加茂川の河原でホホエミのベーグルを食べた。東京でも出遭えないようなすばらしいものだった。 皮を噛むと破れるときの音がぷちっと聞こえるように張りつめていて、中味はバネのようにすばらしい弾力を持っている。中味の…