秋の標識

projetdelundi2007-10-31

『沖縄のおさんぽ』を作るために那覇へ行ったのは確か11月の後半からだったと思う。
東京ではとっくに秋だが、沖縄では晩夏の気色から本格的な秋へと移ろっていく頃である。
1週間前に通った空地の前を再び通りすぎると、以前にはなかったすすきが茂っていたりして、「ここにも秋がきました!」と知らせる標識みたいに見えた。
すすきを発見すると、さびしい気分になった。わたしは夏が過ぎ去ることを異様に恐れている。秋風には死が立ち混じっているようにすら感じられるのだ。
可笑しい気分にもなった。どんな空地にも順番にすすきが生え、秋が深まるにつれ数をましていく。自然は決して面倒くさがったりせず、律儀に秋を教えてくれる。
それから、空恐ろしい気持ちにもなったのはなぜだったろう。時があらゆるものを押し流していく怖さだろうか。あるいは、増殖の恐ろしさか。やがて地上はすべてすすきに占領されるやもしれぬという。増殖することの怖さは、ゴキブリや宇宙人やナチスにも共通してある。
後楽園のすすきは安心して見られた。そんな余計な気分は起こらず、ただただ風流だった。
水辺にあったこと、きらきら光っていること、橋との取り合わせがおもしろいせいかもしれない。
右側の橋は渡ってみると案外高く、足元が脆弱で、怖かった。怖い橋は渡りがいがあるから好きだ。