つつじ園

projetdelundi2008-02-04

なにを見てもパリに例える悪い癖がある。小石川植物園はパリの墓地に似ている。それもモンパルナスよりペール・ラシェーズに。
すべての特徴が一致している。住宅地に忽然と現れる。丘である。空気が緩んでいる。空地のような、雑木林のような。放ったらかしのような、手入れをしているような。きれいなような、きたないような。
ひとはいないようでいる。駅まわりの雑踏が嘘のようにひといきれもなく、ただ遠くから車の走る音クラクションが聞こえてくるだけ。遠くまでつづく墓標のあいだの一本道に見渡す限り誰もいないなと思ったら、散歩なのか墓参りなのか誰かが角を曲がってくる。そうして出会うひとのぶらぶら感も小石川植物園とパリの墓地は似ていた。なかには靴を持って裸足で歩いているひともいた。狂人が多いのもパリの特徴ではある。
もっともパリの匂いがしたところ、それは季節外れのつつじ園だった。花をつけていないつつじは雑木と変わらず、園まで作られて珍重される理由が消滅していて、不思議な感じが漂っていた。つつじが一株一株と雑草だらけの野原に生えている。荒れ果てるほんの少し手前でバランスを取っている放ったらかし感が絶妙であった。
つつじ一株ごとに白いネームプレートが立てられている。それが墓標のように見えるのだった。