温室

projetdelundi2008-02-05

きのうのつづき。
古風な温室があった。廃墟の匂いがして心が騒いだ。
まだ世界旅行が珍しかったころの夢の残骸、そういう感じがした。ガラスのなかで保存されているのは植物というより、植民地を争い合った時代の帝国が見た南洋への夢である。
建物の中央部分だけ高いのも洋館らしい。そこにはヤシの木みたいな南洋の高木を植えるのである。構造はモダンで壁面の2つのカーブが支え合って塔になっている。平屋の部分は回廊のように長くて左右計50mぐらいはありそうだ。
温室に入るとさぞあったかいだろうと期待した。思った通り外気より気温が高い。それよりももっと印象的なのは草いきれだった。何百何千という植物が発した息が充満した部屋のなかはねっとりとしてかすかに息苦しいのだった。本当は酸素が多いから息はしやすいのかもしれないけれど。
回廊の部分には狭い通路の両側にさまざまな種類の鉢植えが置かれてずっと遠くまでつづいていく。真剣でアカデミックではあるけれど浮世離れも時代錯誤もしているような眺め。こんな風景をいつか映画で見たような気がした。
フランス語で温室のことをOrangerie(オランジュリー)と呼ぶ。植民地から帆船ではるばる持ち帰ったオレンジを硝子の宮殿のなかで大切に育てた時代の反映であろう。