ネーナ・ガーランド姫の夢物語5

projetdelundi2008-02-13

かなり前のつづき
「おい、おまえたち、何をやっとるか!」
ネコじいさんの言葉を聞いて3匹のネコはやっとチョコレートを口に入れるのをやめたので、ネーナは口の中のチョコレートをぜんぶ飲み込むことができ、窒息しないですみました。(安心したネーナは口のまわりについたのもすっかり舐めました。)
「誰なの? このネコたちは! ムニャムニャ」
ネーナは寝ながらカンカンに怒りました。(わたしは以前、寝言で怒っている人を見たことがあるのですが、このときのネーナはそういう感じでした。)
おじいさんネコは答えました。
「この中くらいのが、姫さまもよくご存知のムシャムシャ、こっちの小さいネコはポリポリ、大きいのはガブガブです。姫さまは、ポリポリとムシャムシャとガブガブをお呼びになられましたかな?」
「いいえ。私が呼んだのはムシャムシャだけよ。あとの2匹は知らないわ……はっ! そういえば!」
「そうでしょう。呼ばないネコ家来がしゃしゃり出るはずはございませんからな。しかし、姫さま。くれぐれもニャニャア、チョコレートの食べ過ぎには注意しなくてはなりませんぞ」
「わかってる! うるさいなー…ムニャムニャ」
お転婆なネーナもネコじいさんにだけは頭が上がりません。というのも、ネコじいさんはガーランド128世が娘のお目付役として送り込んだじいやなのでした。ネコ語を自由自在に操って999匹のネコがネーナの役に立つよう躾けるのもじいさんの役目です。
まるでネコのようにネコ語が上手なのでときどきちゃんぽんになって、人間と喋っているときにヒト語とまちがえてとつぜん「ニャニャア」と鳴いてしまうのでした。
(これも以前わたしがじっさいに見た人の話ですが、イギリスから帰ってきたばかりの人が「あそこのティッシュ取って」と言おうとして「Over There!」と言ってみんなをびっくりさせていました。その様子はまるでネコじいさんさながらでした。)
顔も体型もネコに似ているので、周囲のひとびとはもはやネコじいさんのことを、ネコみたいな人間だか人間みたいなネコだかわからなくなっています。それで王様は家来のなかで唯一ネコじいさんだけにネーナのそばにいることを許したのでした。
ネーナとネコじいさんが二人で話していると、「ムニャムニャ」「ニャアニャア」とかなり変な感じですが、当人たちはそのことにまるで気づかない様子です。なにしろネーナは眠っているし、ネコじいさんは立派なヒト語を喋っているつもりだからです。