ルルドの洞窟

projetdelundi2008-02-23

最近の妻の口癖は「わたし、修道女になりたいの」というものである。彼女によると、修道女はあらゆる乙女の憧れだという。
修道女はピュアである。セクシャルなものから、あるいは世の中のあらゆる雑事から、遠く隔たれている。祈ることが生活の中心にあり、神だけが精神生活のすべてである。
そう考えれば乙女ではないわたしにもその願望の一面が理解できる。一切の醜いものを魂に関与させず、真っ白な空間のなかで理性の必要とするものだけを見つめながら生きていきたいと、そういう願いを抱くことがときどきある。
実際に実行したことさえあった。わたしがパリでちいさなスチュディオに本しか置かずに暮らしていたのは、いま考えればそれと同じ願望に基づくものだったのだろう。神に祈りこそしなかったが。
きのうのつづきの東京カテドラルにあるルルドの洞窟の写真。
低いアングルから写真を撮るために地面に膝をついてカメラを構えていた妻は、本当に修道女になり、地面に跪いて祈りを捧げているように見えた。
ルルドの洞窟はフランスにある聖地で、ひとりの少女に聖母マリアが宿り数々の奇蹟を起こした場所だという。これはその洞窟を目白台に模したものである。
ここを訪れたあとフランスのルルドの洞窟の写真を見たら、ひとびとは本当に地面に跪いて祈りを捧げているのだった。主に年老いた女性たちであった。彼女たちが鬼気迫るごとく真剣に、憑かれたように祈っていることが、後ろ姿からだけでも伝わってきた。
神への祈りがリアリティを持つ場所に行ったら自分はどういう気持ちになるだろうか。
ルルドの洞窟は今度フランスに行ったらぜひ訪れてみたい場所のひとつになった。