東京カテドラル

projetdelundi2008-02-22

この教会には外観だけでひとを圧倒するようなものがある。前にきたときにも青空のなかでアルミの外壁が眩しいほどに輝いていた。この日もそうだった。偶然にちがいなかったが、この教会は空を我がものにしているのではないかという錯覚が起きた。
恐る恐るドアを押した。わたしたちは薄暗闇のなかにいた。自分を教会内部の雰囲気に馴染ませ、我を取り戻すまでにやや時間がかかった。それほどカテドラルの空気は現実離れしている。
見上げるほどに高い、という慣用句では足りないほどもっと天井が高い。見上げた視線が天井の最上部に届くまで時間がかかるぐらいに。この教会がこんなにも荘厳なのはあまりにも巨大なせいでひとつの視線のなかに全体を納められないことに起因しているのかもしれない。
天井から細いスリットが開いていて、そこから光が床に落ちて、暗闇の底にいるわたしたちをぼんやり照らした。それがこの巨大な建物の唯一のあかり、拠り所であった。白い光にはたしかに神聖な感じがあって、恩寵という言葉が頭のなかを巡った。
わたしは虎太郎の乗るベビーカーをゆっくりと押して教会をまわり、妻は整然と並んだ木のベンチの一脚に腰かけていた。
教会を出て青空の下へ戻ったときにも、むずかしい映画を見て映画館を出たあとのような、胃のあたりがなんとなく重たい感じが残っていた。