溶ける

projetdelundi2008-05-30

八芳園の結婚式場には日本庭園がある。友人の結婚式でもきたことがあるが、そのときは遅刻して、式のあとには酔っぱらって帰ったので、庭園のうつくしさに気付かないままだった。
すり鉢のような地形の底に池がある。すり鉢の土手の部分を渦のように巻きながらいちばん下まで降りていく。園路はまるでサクラやモミジの木で空を覆われた回廊だった。
池のほとりに出たところで底の部分へたどりつく。池のなかに飛び石の上に建てられた東屋が浮かんでいる。そこに座ってみたいもんだと思ったら先客がいて、老夫婦が口もきかずにただぼうっとなごんでいる。アイスみたいにとろとろっと椅子の上に溶けてしまうのじゃないかと思うぐらいの尋常ではないなごみぶりであった。
一巡りしてくると夫婦はいなくなっていて、わたしは飛び石を飛び歩いて水上の東屋の下に腰かけた。わたしも溶けた。空から降ってくる光は風にそよぐ葉叢にさえぎられきらめいている。水上を渡ってくる風はさわやかでどこまでも心地いい。水面に反射した光が波でまたたきうつろいながら東屋の軒に映っている。ここに座っているといくらでも時が過ぎて竜宮城のようなことになってしまうのではないかという危険を感じた。