スプーン

projetdelundi2008-06-09

最近の虎太郎(1歳3ヵ月、11.5キロ)はゴハンを食べるときスプーンを三本用いる。右手用、左手用、わたし用である。
ゴハンを食べさせようとスプーンを持っていくと虎太郎は右手でひったくる。ひったくられるとゴハンをあげることができないので取り返そうとしても絶対に離さない。奪い取ろうとすると泣く。しょうがないのでキッチンからもうひとつのスプーンを取ってくる。今度はこれを左手でひったくる。また取ってきた三本目のスプーンで無事ゴハンをすくうことができる。
けれども、最近の虎太郎は自分の手でゴハンを食べたいという欲求が強くなってきた。親に食べさせられるのではなく自分の間合いで食べたいということだろうか。でも、虎太郎ひとりにやらせるとこぼしたりかきまわしたりひっちゃかめっちゃかになる。だから、わたしがまずスプーンでゴハンをすくい、それを虎太郎の口元にはこんでいる途中で虎太郎が柄をひっつかみ自分で口にもっていくのである。
けれどすでにスプーンを二本持っている虎太郎はどうするかというと、左手のスプーンを豪快に放り投げ、ゴハンののっている三本目のスプーンにつかみかかるのである。まるでバッターがヒットを打ったときバットを放り投げてファーストベースへ走り出すみたいに。ゴハンを口元に持ってこられると、瞬間的に食べることで頭のなかがいっぱいになり、左手のスプーンはどうでもよくなるのであろう。
ゴハンを無事口のなかへ運び飲み込んだあとも名残り惜しいのかスプーンを噛んで離さない。そのスプーンを無理に奪い取ろうとすると、わーと泣いてたいへんうるさいので、わたしはさっき虎太郎が放り投げたスプーンを拾いにいく。これをキッチンへいって洗い、戻ってきてゴハンをすくい口元へ持っていくと、虎太郎はまたホームランを打ったみたいにスプーンを放り投げる。この繰り返し。だからどうしてもスプーンは三本必要なのである。