煉獄の霊魂のために

projetdelundi2009-07-30

石を積み重ねたような外壁に青銅で葺いた三角の屋根、その上には天を指す十字架。
カトリック赤羽教会は、私たちの教会に抱くイメージに極めて近い外観をしているが、実際に映画やドラマのロケでよく使われるそうである。
被昇天の聖母に捧げられた教会。ゴシック式の祭壇には、17世紀スペインの画家ムリーリョが描いた被昇天の聖母に範を取った絵が掛けられていて、天使に付き添われた聖母マリアが天に向かって飛び立っている。
脇祭壇にある白いマリア像にはステンドグラスから差す光が七色の影を描き、その下には聖母の純真を象徴する白百合がいけられていた。
この教会の備品には古いものが多くて趣深かった。
聖歌集は革張りの表紙で小口はカラフルな色で塗られている。それは長崎のド・ロ神父記念館の90歳のシスター橋口が私たちにオルガンを弾きながら歌ってくれたときに見ていた本と同じなのだった。
もう一冊の聖歌集(どっちがカトリック聖歌集で典礼聖歌集だったかわからなくなったが)は、たくさんの色の栞紐のついた古いもので、これも長崎の神の島教会で見て写真に収めたものと同じだった。(数多くの教会で古い聖歌集が大事に使われている)
歌を歌うとき、やや茶褐色に変わったページを開くとそこにもステンドグラスの光が射して色づいていた。
極めつけのレトロは…入口の壁に掛かっていた「煉獄の霊魂のために祈りましょう」と題されたもの。おそらく銅版画であろう、とても細い線で描かれた絵(ほとんど消えかかってなにが描かれているかよくわからなかった)のまわりには80箇条からなる文が書かれている。その下に受け皿があって中には木製の、そろばん玉ぐらいの大きさの玉がたくさん入れられてそれぞれに数字が書かれている。
これはお祈りのための道具なのだった。天国に行けずいまだ煉獄で彷徨う不幸な魂のために祈りを捧げる。人が犯す罪の種類は80に及び、くじ引きのようにこの玉を引いてその数字のところに書かれた罪について
「主よ彼等に永遠の息みを与へ給へ」(なんと旧仮名遣い)と祈り、許しを請う。
私が引いてみると33番が出た。
「33 弁舌をもって罪を犯せし」
私がまさにいまもこうして犯している罪なのだった。「煉獄の霊魂のために祈る」ことはとりもなおさず我が罪を振り返ることなのだろう。