伊勢丹の空

projetdelundi2007-11-16

エレベーターのドアが開くと眼前に緑が広がっていた。
ここは本当にデパートの屋上なのだろうかと一瞬現実から隔たってしまうほどよくできた庭園である。
植木と、その下生えにはすすきや萩など草花が配され、先日の向島百花園をちょっと想起させる和テイストの草庭となっている。
木々の向こうに超高層ビル、その手前に雑草のごとく繁殖するくすんだコンクリートの雑居ビル、屋上ではチェーン居酒屋や消費者金融の看板が自己主張の小競り合いを行っている。その横にはうるさい音を立てながらビルの建築が進んでいて、鉄骨をワイヤーでぶら下げたクレーンがゆっくりとまわっている。
新宿らしい粗暴でエネルギッシュな風景と、心安らぐ空中庭園の奇妙な組み合わせは、レールの軋むキーキー音に脅かされながら地下鉄のシートで居眠りして見る、東京の夢にふさわしい。
昼時というのに人はまばらである。幾組かの子供連れ、仕事をさぼったサラリーマンはのんびり缶コーヒーなど飲んでいる。
こんなにすばらしい庭を作っておきながら積極的に周知はしていないのだろう。わたしたちのように地下食品売場でテイクアウトしてここでピクニッケされたら、レストラン経営の妨げになるのかもしれない、と思えるほど気持ちのよい場所だった。