JPHへの質問

projetdelundi2007-11-17

きのうのつづき。伊勢丹デパ地下グルメ
吹きすさぶビル風の中、今回の撮影は困難を極めた。
クロスもチョコレートケーキのココアパウダーもパン屑もすべて吹き飛んでセッティングは幾度となく台無しにされ、妻のOKが出たのは何カット目であっただろうか。(わたしはクロスを手で抑えていただけだが)
海老のスープとポークリエットのサンドイッチはbeというアラン・デュカスがプロデュースしたパン屋のもの。
キッシュ・ロレーヌは敬愛するメゾン・カイザー。以前書いた長命寺桜もちと同じ原理で、塩気は角切りのハムからやってくる。肉の旨味とスモーク感をともなった塩気が口のなかでキッシュの部分に触れると、味が上昇カーブを描いて膨らんで、上質なチーズの風味を目覚めさせるのだった。
デパ地下なのにそこだけガラス張りでドアマンがいるものものしさに開店当初は少なからぬ衝撃を受けたジャン=ポール・エヴァンには、あまりの敷居の高さに、いまに至るまでついぞ足を踏み入れたことがなかった。
宝石商のようなショーケースのなかには目も眩むばかりのチョコレート、チョコレート、チョコレート。
チョコレートボンボンだけでも幾種類も並んでいる。同じ色同じ大きさのボンボンでも種類ごとに形やカーブを繊細微妙に違えている。
ケーキはチョコレートケーキしかない。普通多くても3、4種類しかないチョコレートケーキが、ここには10種類ばかりもあっただろうか。
写真のなかのグアヤキルには、「ビターチョコレートのこくが深い味わいのケーキ」と簡潔な説明がネームプレートに添えられていた。これはもっともストイックな、酒やフルーツと組み合わされていない、純粋なチョコレートケーキである。
堅牢そうなグラッサージュ(表面のコーティング)と相反するように、フォークがすっと通った。チョコが混ぜ込まれしっとりした2層のスポンジはやわらかく、チョコクリームと交互にサンドされている。
ビターチョコレートの衝撃がかってないほどの余韻を引き、長く、長くつづく。
カカオの香り、味わいは、ときに苦く、甘く、一瞬ごとにさまざまな側面を垣間見せながら変化し、溶けていく。
この時間の芸術はどのように設計され、どのような高い技術によって実現されているのだろう。