鳥竹

projetdelundi2007-12-02

きのうのつづきで、宮下公園において何を食べたかというおはなし。
渋谷の半分は若者の町であり、地味なもう半分はおやじシティーである。
マークシティから井の頭線の改札を出るとあっちこっちから煙が出ている。狼煙で敵の接近を知らせているのではなく、焼き鳥の煙である。
雑居ビルと飲み屋が密集し、ときおりモルタル壁の天然昭和建築が立ち残っているこの町は、カリスマショップ店員が跋扈するはるか大昔、渋谷が単なる郊外電車の乗り継ぎ駅だった頃の場末感がかすかに残っている。
妻は授乳中なので酒が飲めない。ここを通りかかるたび「焼き鳥いいなー、中ジョッキいいなー」と羨望の眼差しで煙を見詰めていた。しかしある日、炭火のコンロで板前が串をひっくり返す場面が映し出されているその窓が、お持ち帰りカウンターであることに気づいたのである。
焼き鳥丼800円、親子丼750円。
焼き鳥は食いごたえある肉の厚さで、つまみどころか十分飯のおかずになる。
親子丼は幸福な玉子のトロトロが味わえる。
両方とも焼き鳥ダレが別封されているので好きなだけつゆだくにできる。
ひな鳥使用というだけに臭みもないやわらかい肉である。
焼き鳥屋とはいいものだ。ガード下の赤ちょうちんみたいな、煙に燻されて店の壁が黄色くなったような店が特にいい。ガイドに載るような高級焼き鳥ではなくても、その店その店に捨てがたい味がある。
おやじがカウンターで袖すりあわせ、わーわーいいながらジョッキをグビグビ傾ける。あの狭さうるささが、誰もが遠慮なく自分の庶民性を開放できる舞台装置になっている。