ベーグル

projetdelundi2007-12-03

阿佐ヶ谷のベーグルというベーグル屋のベーグルを食べて思うのは、「女の人の手で作った味がする」ということで、同時に「男性が作ったものと女性が作ったものの味というのはちがう」ということにも改めて気がついた。
中央線沿線で好きなパン屋はまず吉祥寺のダンディゾンでそれから阿佐ヶ谷のベーグルである。(西荻窪のポム・ド・テールというベーグル屋もまた強烈なのだが。)
ダンディゾンは繊細だが男性的である。センスという言葉を使うと一言で終わってしまうけれども、ある表現したいものに狙いを定めて集中力と技で見事に成功させている感じである。
ベーグルのほうは、これを作っているひとは、まずお客さんの食べてうれしそうな顔が頭に思い浮かんでいるという気がする。そして、あたたかいものへの指向が、かっこよさよりも優先している。それが女性らしい。
ベーグルの皮の香りがとてもあたたかい。そして噛むともちもちで、噛めば噛むほど小麦粉の味が沁みだしてくる。
メロンパンは甘さをあたたかさと感じられるようなほどよい甘さがいい。ベーグル以外のパンも普通のパンよりやや弾力がある。
いちばん人気があるというオレンジのベーグルがわたしも好きだ。オレンジピールの苦みと甘さとすっぱさが絶妙に同居して、そのせいでますますベーグル本体もおいしく感じられる。
喧噪から隠れるように住宅街の路地裏にあって、店の前にはいつもひとが並んでいる。この店はとても狭くてお客はせいぜい二人しか入れないのだ。
ダンディゾンにヤングマダムが多いのと比べ、こっちは若いひとやアートっぽいひと、外人なんかがきている。
白いペンキ塗りの壁や、店員さんがいつもいい笑顔で接客してくれるのも好きだ。
店のちいささのためにかえって、ずっと抱いてきた夢のパン屋さんを実現させたという情熱、実現させたあとも情熱を忘れずに持続させている誠意が想像される。
午後の早い時間にベーグルは売切れる。不定期に休むことも多い。行ってがっかりということもときどきあるが、それでいいとわたしは思っている。あくせくして自分のスタイルを見失うよりのんびりと仕事したほうがいいからだ。
写真の右側は有名なうさぎやのお菓子。