東照宮第一売店

projetdelundi2008-01-11

上野公園はレトロである。
小さい頃親に連れられてパンダを見た頃とまるで風景が変わっていない。というより、上野の風景を見て、70年代とはこうだったんだと頭の隅っこの記憶を虫干しした感じである。
小春日和に誘われて上野公園のだだっ広い風景のなかを親子連れとかお年寄りとか地方からきたようなひととかたくさん歩いていた。そこにいるひとびとは六本木ヒルズや渋谷の公園通りといった東京のメインストリームになじみきらないひとたちである印象を持った。(わたしたち親子もその一味である。)
歩いていると、写真のような店に出くわした。木造トタン葺きの見事な天然商店。東照宮第一売店と看板が出ていた。
ありとあらゆるものが並べられている。おめん、キーホルダー、肉まん、ジュース、人形。満艦飾のなか、風車が回り、風船がふわふわし、幟がひるがえる。店のなかからAMラジオが聞こえ、店の前の遊園地からはサザエさんインストゥルメンタルの曲が流れる。テーマ曲じゃなくて、マスオさんが「お父さん、そういえばこのまえこういうことがあったんですよ」と振り返るときの音楽。とにかく音もヴィジュアルもいろいろにぎやかである。
「並べ方がすごくいいですよね」
とおかみさんに話しかけるとうれしそうなとまどったような笑顔を浮かべて
「そうですか? だからときどき写真を撮っていくひとがいるんだ!」
とそんなことはじめて思いついたという感じだった。自分の家がなんだかわからないけど写真に撮られている感覚とはどういうものだろうか。自分が美人であることを知らない美人に似ているだろうか。
「並べ方がいいっていっても……もうこれしか並べようがないんですよ。……並べるものも場所も決まっているし」
「でもいっぱい幟とか立っててにぎやかじゃないですか」
「あ、そういえばそうですね。いっぱい立ってますね」
狙いなんてなんにもないのである。だからいいのだろう。