サトウのメンチ

projetdelundi2008-02-26

吉祥寺の商店街にはいつも長い行列ができている。サトウのメンチを買うひとびとである。
たしかにここのメンチには1時間や2時間の行列に耐える価値はあるだろう。普通のメンチのように肉が固まりきってはいない。肉がやわらかくほどけ、レアで生々しくて、肉汁が沁み出す。
「元祖丸メンチ」と呼ばれるのは平べったくなくて球体だから。
最初は普通の小判型だった。山と積まれたひき肉のなかから、アイスクリームをすくうディッシャーで1個分の肉をつかみ出し、それを潰して整形していた。
あるとき、面倒くさくなった職人さんが、ディッシャーですくったそのままの丸い肉に衣をつけて油で揚げた。
そんなものはとうてい売り物にならない。と、店のひとたちが賄いとして食べた。すると普通の小判型よりずっとおいしかった。
「丸メンチって手抜きからはじまったんですよ」とは店長の言葉である。
オーナーは牛の目利きとして食肉業界では知られた存在だ。だからメンチの素材にも自信を持っている。
松坂牛、黒毛和牛、三重県産牛が理想的にミックスされ、肉に甘みがある。
吉祥寺にいくたびわたしはサトウでコロッケを買う。メンチ以外のもの、コロッケやカツや牛肉は並ばずに買うことができるからだ。
コロッケは家でオーブンで焼き直して、キャベツの千切りとともに食べる。
肉屋のラードというのはときとして臭いことがあるが、ここのラードはまったくそんなことがない。食欲を誘う甘い香りがする。
写真は次号のピクニッケの撮影でのもの。長年の夢、サトウのメンチとダンディゾンのパンによるメンチカツバーガーを手にした瞬間。手にソースがたれているけど、興奮でそんなことも気にならない。