ケーニッヒ

projetdelundi2008-02-27

井の頭公園の入口近くにあるソーセージ専門店。
創業者はドイツでソーセージを食べ歩いた末にいちばん味が気に入った店で2年間修業した。
もともと食肉業を営んでいた縁もあり優れた品質の肉を仕入れることができる。
豚は埼玉産の肩肉。牛は黒毛和牛のスネ肉。
なぜ肩肉がいいかというと、大きな頭が上にのっかっている、いちばん筋肉のつきやすい部位だから。コラーゲンがたっぷり含まれていて旨味が強い。一方で骨化している硬い部分を取り除かなくてはならない面倒があって、一般の業者は扱うのを嫌がる。
塩はドイツの岩塩。海塩よりもシャープで肉類の旨味を引き出しやすい。
スパイスもヨーロッパから取り寄せている。香辛料の産地はアジアの赤道地帯ではあるが、最高級品は旧宗主国であるヨーロッパへすべて集まる。日本に直接くるスパイスにはいいものがない。
いいものとわるいものとのいちばんのちがいは甘みである。質の悪い胡椒(ラーメン屋さんに置かれているような胡椒)は辛さだけがあって甘みがない。いい胡椒は辛さがしっかりとありながら甘い香りがする。
多くのソーセージ業者ではすでにソーセージ用に混合されて販売されているミックススパイスを使う。ミックススパイスが日本の惣菜・加工食品の味を均一化している。スーパーで売られている惣菜はほとんどがN社やA社のミックススパイスを使っている。
ケーニッヒではみずからスパイスを配合する。レシピがあるわけではない。ドイツで食べた忘れられないソーセージの記憶がミックスのよりどころである。
「自分がおいしいと思った味を舌の記憶によって再現することが料理人の基本だと思うんです。そうでないと(記憶のぶれがないと)オリジナルの料理というのは生まれない」
ヨーロッパブナのチップを輸入してスモークしている。日本ではサクラのチップを使うことが多い。ドイツの塩にはブナの香りが合う。
ほとんどの工程をドイツの機械で製造している。たとえばひき肉をペースト(ソーセージの中味)にする機械。よく切れる刃が1分間に3600回転する。この混ぜ合わせるスピードが味を決める。たんぱくと水と脂が分離しないうちにすばやく正確に作業を終えなくてはならないから。
ソーセージの皮には豚の腸を使ったものと、羊の腸を使ったものがある。部位や飼育法にもよるが一般に豚のほうが皮が厚い。コラーゲンがより多く含まれているからである。皮が口に残るような厚い皮は豚の腸である。その場合はフライパンでよく炒めるとカリカリしておいしく食べられる。
いっぽう、羊の薄い皮は破れやすい。ボイルする場合、沸騰させると破れてなかの肉汁が外に出てしまう。家庭でボイルするときは、沸騰させたお湯のなかに冷蔵庫から出したすぐのソーセージを入れてフタをして火を止めてしばらく放置すると失敗せずにボイルできる。
カリカリになるまで炒めるのはおいしいけれども、ゆでたあとに炒めてはダメ。肉汁があふれるようなジューシーなソーセージが好きなひとはボイルが、カリカリが好きなひとは炒めるのがオススメ。
もうひとつの名物は臭みのまったくないレバーヴレスト(レバーペースト)。レバーに臭みがあるのは肝臓の血管に残存した胆汁がくさることによるもの。新鮮なうちにすべて血管を取り除けば臭みはなくなる。朝潰しの豚のレバーをすぐ店に運んで調理している。