屋根

projetdelundi2008-03-02

きのうの夜、ネコが奇矯な声を発していた。2種類のにゃあが交錯する。まだ肌寒いのにネコには春がやってきたらしい。
おなじみのネコである。いつも向かいの風呂屋のトタン屋根のうえにいる。夏は暑くてなにもしたくないのか寝そべっている。冬は屋根にひっついて冬の太陽を吸ったトタンから暖をとろうとしているのか寝そべっている。季節がどう巡ろうと結局は横になっているだけだ。ネーナ姫のようなネコである。
きょう窓から外を見やるとやっぱり屋根のうえで寝ている。と思ったらネコは屋根から飛び降りた。おしりが庭の木に引っかかり枝が揺れる。
木は揺れつづける(振幅をじょじょにちいさくしながら)。空の晴れ渡ったおだやかな昼下がり、6階の窓から見下ろす風景のなかで動いているのは枝だけである。
というより、揺れ動く枝によって街が静止していることに気づいたのだった。揺れが収束するまでわたしはそこから目を離すことができなかった。
遠くからかすかにパワーショベルの駆動音と建物が崩れ去る音が聞こえていた(わわーん、ここここ)。消えたネコがトタン屋根に戻ってきてまた寝そべった。