モリマリティー

projetdelundi2008-03-24

邪宗門でモリマリティーを注文した。トワイニングプリンス・オブ・ウェールズエバミルクを注いだもので、「こうするとイギリスのお茶そっくりになる」と森茉莉が愛飲したものだという。
本当にそうだった。ミルクを入れても心地よい紅茶の風味だけは残しつつ後口もべたつかずさわやかに飲めるのだった。いまではマリアージュ・フレールでもウィッタードでもヨーロッパと同じ紅茶をデパートで買うことができるけれど、むかしは洋行から帰ると口に合う紅茶を探すのは大変だったのではないだろうか。モリマリティーはお手軽にその大問題を解決してくれるのだった。
森茉莉は毎日ウィンナーコーヒーを飲んでいたそうである。邪宗門のウィンナーコーヒーは甘すぎずおいしかった。
この店でご主人に写真を見せてもらうまで森茉莉の顔を知らなかったのだが、驚くほどわたしの母に似ていた。どの写真を見ても「お母さん!」と呼びかけたくなるほどそっくりなのだ。
わたしの母は喫茶店に行くと必ずウィンナーコーヒーを頼む。いまはどうか知らないが、子供の頃いっしょに喫茶店に行ってメニューにその名前を見つけると必ず頼んでいた。
やってきたコーヒーをひとくち啜ると決まって「◎◎で飲んだウインナーコーヒーにはかなわない」というのだ。まるでその一言をいうために注文したみたいに。
森茉莉もまた自分の好きなものに対する必要以上の執着と頑固さを持ち合わせていそうなイメージがある。どこかで飲むたびに「邪宗門のウインナーコーヒーにはかなわない」といっていたかもしれない。