富士見丘教会

projetdelundi2008-03-26

下北沢の丘の上に建つ教会。
巨大な教会の荘厳さは神の偉大さを連想させるが、ちいさな教会が感じさせるのは家のようなあたたかみである。この教会を訪れて知ったのはそのことだ。
縦長のアーチ型の窓から差す光が磨き込まれたフローリングの床に鈍く反射して心地いい薄暗さを作り出している。
背の高い建物ではないけれども、天井板は張られてなくて三角屋根と木造の梁までが素通しになって天井の高さが確保されている。
装飾の少なさシンプルさが好もしい。十字架はただ角木を交差させただけのもので、ステンドグラスは葡萄が一房描かれただけ。
この教会が建てられた1936年から使用されているオルガンは、いまでは珍しい足踏み式のもの。当時サラリーマンの年収と同じぐらいの値段がしたそうである。木造の会堂に響くレトロな音色がかけがえのないものに感じられて、いまでも大切に古いオルガンを使いつづけているのだという。
萩原朔太郎が『猫町』を発表したのは教会が完成する1年前の1935年のことだった。富士見丘教会と名が付いたのは富士山がよく見えたからだそうで、だとするなら周囲に高い建物はなにもなかったはずだ。だから、この教会が建っていたら格好の目印になったにちがいなく、朔太郎が道に迷って猫町に足を踏み入れることもあるいはなかったかもしれない。
牧師さんが親切にもバックヤードのなかへ招き入れてくださり、2階から会堂を見下ろすこの写真を撮ることができた。