浜離宮

projetdelundi2008-04-11

入口あたりから青臭い匂いがしていた。それがなんだかわからないまま歩いていくと香りがだんだん強くなってきて、木の間にまばゆいような黄色が見えてきた。
このあいだの日曜日、浜離宮では菜の花が満開だった。菜の花は河原とか田園地帯とかだだっぴろいのどかな場所に咲くイメージがあったので、汐留の高層ビルのすぐ真下に黄色い花畑が広がっていたのは意外に感じた。
少女的でロマンティックだった。遠くまでずっとつづく黄色い花畑のなかを一本の道がくねりながら通り抜けていく。花畑を抜けたところにはピンク色のサクラが待ち構えている。
一本の菜の花に鼻を近づけてみると例の青臭さが強く香った。匂いの元はやっぱりこの無数の菜の花である。蜜を求めてモンシロチョウが忙し気に飛びまわっていた。青臭さは菜の花が発信する虫たちへのメッセージだ。わたしが気づいたよりももっと遠くでも虫たちはこの香りを嗅ぎ分け、おいしい蜜を求めて菜の花畑に急ぎ飛んでくるだろう。
以前、食いしん坊のミツバチのオハナシを書いたことがある。ブータンという主人公は蜜を収穫するとどうしても食べたくなってしまう。だから巣に着くときにはカバンのなかがすっからかんになっているのでいつも女王バチに怒られる。ブータンはどうして他のハチがこんなにおいしいものを食べずに我慢して巣まで持って帰れるのかわからない。
科学的真実はどうかというと、花粉や蜜は採取したときには味はなくて、巣で待っている女王バチの分泌する液と混ぜ合わせてはじめて甘いハチミツになる。だから、ミツバチたちはつまみ食いすることなく、巣まで蜜を持って帰れる。
子供のオハナシには必ず教訓がなければならない。ダメなヒトについて書かれたオハナシを与えて子供がマネをするといけないので、そんなもの誰も買わないというのだ。
だからブータンにも、巣まで花粉を持って帰れるいいハチになってほしかったのだが、つまみ食いせずにいる方法をわたしはどうしても見つけてあげることができない。きっとわたし自身が忍耐やストイシズムとは縁遠い、つまみ食い人生を送っているからだろう。