国際フォーラム

projetdelundi2008-05-22

オフィスビルが、レトロなのも超高層も、堂々としていることはどれも変わらずに立ち並んで、ひろびろとした並木の道を背広姿のひとたちが行き交う。
丸の内にくると、きまってもうひとつの人生を思う。ちょっとしたはずみでサイコロがちがう転がり方をしていたら、いまみたいなふわふわした生活ではなく、オフィスビルの重厚な壁とスーツに護られて生活していたかもしれないと。
だから丸の内は自分のテリトリーではなくてなんとなく肩身が狭いけれど、最近は好きな場所を見つけた。
有楽町駅と東京駅のあいだのガラスの建物、国際フォーラムである。
ビルの中庭に背の高い木が植えられて新緑が屋根のように頭上を覆っている。それを透かして透明な木漏れ日がそそぎ、風で葉がそよぐとともに地面に映る光と影が戯れていた。目には眩しさを感じながらビル風が吹き抜けて肌は涼しい。五月晴れの昼下がりはここちよく時が過ぎるのだった。
ランチタイムにはネオ屋台村が出現する。十台近くもバンが並んでエスニックや洋食やらを5,600円で供する。青空の下、バンの前をいったりきたりしながらおいしいものたちのあいだでどれを食べようか悩む。自分の気持ちがいつのまにか高揚しているのを感じて、これはお祭りの露店の楽しさだなと思った。
いろいろ食べてみて(ピクニッケ本番のメニューを選定するため)いちばんおいしかったのはボナペティというローストチキンの屋台である。車の上で丸ごと一羽の鶏肉が何個も何個も棒に串刺しにされてぐるぐるまわっている。これはパリの肉屋の前に置かれておいしそうな香りを振りまいている機械と同じものだ。パリのひとびとはこういうものを買って帰って晩ごはんのおかずにする。鶏肉の焼ける匂いがローズマリーの香りとともにあたりに立ちこめているのもパリと同じことだ。
車の上で肉を切り分けているのは日本人だが、サービスをしているのはフランス人。このひとは日本語がしゃべれないみたいで、いらっしゃいの代わりにボンジュールといい、ありがとうございましたの代わりにボナペティという。わたしも久しぶりにボンジュールとかメルシーとかいった。
鶏肉は皮がぱりぱりでジューシーである。弁当箱の底にしたたった肉汁を添えられたジャガイモのローストに浸して食べるのがなんともいえない。
ボナペティがやってくるのは水曜日。昼休みの時間帯にいくと30分ちかくは並ぶ。
ネオ屋台村
ボナペティのスケジュール