ホタルブクロ

projetdelundi2008-06-04

多摩川駅は森に囲まれた駅だった。渋谷から十数分とは思えないほど濃い緑陰がホームから見え、ちょっとした旅行の気分である。
紫陽花の名所、多摩川台公園へ。駅前の丘を上がる階段に沿って紫陽花も段々に咲いている。階段を上がると驚きが待っていた。一面の紫陽花。これほどたくさんの紫陽花が並んで咲くのを見るのははじめてである。
紫陽花は宙に浮かんでいるような感じがする花だ。ボールみたいに球形に花がつくのも不思議だし、爽快で軽快な紫色がよく見るとグラーデションとなって花びらを染めている様子は、炭酸水のなかにカシスの液体を垂らしたときのようだ。
たくさんのひとびとがスケッチに訪れていた。数えきれないほどの球形の紫色水色の合間合間に見えるひとの頭が、どれも熱心に画面に向かっているのはおかしい。
ホタルブクロという花に思い入れがあるといって妻が熱心に写真を撮っていた。ホタルがこの花のなかに入ると提灯みたいに闇のなかでほの明るく周囲を照らすのだという。
そういえばもうホタルの飛ぶ季節なのだ。暑がりの妻は扇風機を出し、痒がりのわたしは蚊に刺された。