大阪教会

projetdelundi2008-09-06

ヴォーリズが建築したレンガ造りの教会が大阪の中心部に残っている。大阪教会というプロテスタントの教会である。
教会役員をされているという、キリスト者らしさにあふれた親切なご老人に案内をしていただいた。1922年献堂というから築80年にもなるのに、中はピカピカだった。階段の手すりもベンチも床も黒光りしている。教会のうつくしさは使うひとびとの心によって長い年月をかけ醸成されていくのかもしれない。
創立時から使われているベンチは桜の一枚板で作られているとのことで、背板は微妙なカーブを描いてすべての聴衆が説教者のほうを向くようになっている。
ドアの木枠に十字架の彫り物が施されていたり、玄関のタイルが十字架を描いていたり。建築家のキリスト教への思いは細部にまで籠められたこだわりから伝わってくる。
会堂へは玄関から階段を昇っていくようになっている。
「教会はどこもそうかもしれませんけど、だんだん信者さんの平均年齢が上がってまして、この教会には百歳にもなる信者さんもいます。ちょっとした段差でもつらいという方がいてエレベーターをつけたんです。それでもどうしても自分の足で階段を上がっていきたいという方もいて、一生懸命上がられるんです」
ヴォーリズならではの繊細な擬宝珠(珠のような彫刻)が彫り込まれた手すりにつかまって、一段一段と階段を上がる信心深い老人の姿。何十年ものあいだ日曜日ごとに握りしめるのは磨きあげられた同じ手すりである。7日おきにやってくるその感触が、生きる糧にも、自己確認にもなっているのだろう。手すりを介して、設計者、彫刻を刻んだ職人、磨きあげる教会関係者、そして信者が手を握り、思いを交わしあっている。
手すりとはひとがそれにつかまりみずからを支えているという意味において信仰ににているかもしれない。