浄化

projetdelundi2008-11-07

軽井沢は浄化の場所である。軽井沢の父と呼ばれ、最初に避暑地としてこの地を見出した宣教師アレクサンダー・ショーは、軽井沢のことを「屋根のない病院」と呼んだ。
軽井沢へ行ってアウトレットや軽井沢銀座ばかり行くのはもったいない。繁華街からちょっと裏手に入ると森が広がって、木の香りが満ちている。高原の澄んだ空気は体をなかから浄化する。透明な空気を通して見るうつくしい空や森の色も心を浄化するかのようだ。丸太や板でできた古い木造の教会もまた静寂と敬虔な雰囲気によって精神を浄化してくれる。
ショー礼拝堂から万平ホテルのほうへ至る、矢ケ崎川沿いの道はお気持ちの道と呼ばれている。紅葉のなかの回廊のような坂道をレンタサイクルで滑り降りる。秋晴れの陽光のなか、涼やかな風を切って進んでいくのは心地よかった。
途中にある室生犀星記念館は犀星が夏を過ごした別荘で、こおろぎ箱と呼んだほどちいさい家である。
苔の敷き詰められた庭にモミジが散り落ちていた。犀星は執筆活動と同じぐらい庭造りに熱中していたそうである。
「きりふかき しなののくにに こほろぎの あそぶお庭を 我はつくるも」
人間の視点ではなくこおろぎの視点で庭を作っているというのがおもしろい。
こういう静かな家で、着物でも着て、縁側で庭を見ながらお茶をすすったりして悠然と過ごせば、幸福で充実した毎日が実現しそうである。仕事もいまの2倍ぐらいはかどるだろうし、毎日ブログを更新できるだろう。すべては夢想にすぎないけれど。