パン・ラボ

projetdelundi2008-11-13

11月17日発売の『パニック7ゴールド』で「パン・ラボ」という連載をはじめることになった。第1回はバゲットについて特集している。東京でもっともおいしいとされる12種類のバゲットを食べ比べてそれぞれにどういうおいしさがあるか比較検討するという内容。
バゲットバゲットであり、買ってきたからといってまじまじ見ることもないけれど、12本集まって同じテーブルの上に一同に会せば、おのずと個性が目に飛び込んでくる。長さも太さも形もクープ(切り込み)の数も色もちがう。それにしてもなんとおいしそうな、また不思議な形をした食べ物だろう。
味もいっしょに食べれば特徴が歴然としている。香り、皮の硬さ、もちもち感、口溶け、甘み、軽さ・重さなどなど。
なぜこのようなことをはじめたかというと、どれがいちばんおいしいかを決めるためではない。少なくともパンにおいてそれを決めることはできない。ここに紹介したパンはどれもおいしい。あるのは個性のちがいである。
わたしは自分の舌に格段の自信を持っているというわけでもなく、またパンの知識があるわけでもない。ただこのパンはおいしいからまた買おうとか、これは今後は口にしないようにしようとかそうしたことを人並みに漠然と思うだけだった。
そんな折りに、『東京ピクニッケ』の仕事などを通してパン屋さんに取材することが何度かあった。そのとき「これは北海道の有機栽培の粉を使っていて」などと話を聞くと、うんちくとしては理解することができても、では北海道の小麦粉を使うとどういう個性のあるパンができるのかとか、他の国の粉だとどういうパンになるのか、粉のちがいも重要だが作り方によっても個性は変わるのではないかとかがまったくわからなかった。
パンを食べるあるいは取材をするというのは一軒一軒に対する個別作業ではあるけれど、その一軒が全体のなかでどのような位置にあるのかは五里霧中だった。つまり地図を持たずに外国の町をさまよっているような心細い感じであった。
普段、散歩の本を作っているプロジェ・ド・ランディがパンのことを研究しはじめるのはそういうわけで、パンの地図が入ったガイドブックを作ろうとしているのである。