雑司ヶ谷

projetdelundi2008-12-16

副都心線という地下鉄の新路線ができた。いつ乗ってもガラガラで、夕方の込み合う時間帯でも座ることができる。この秘められた事実にみんな気づかないでいつまでも自分だけ座っていたいなどとセコいことを考えながら乗っている。
雑司ヶ谷にも簡単にいけるようになった。そのために人の通りが変わって、東京のなかの村みたいな、雑司ヶ谷独特の雰囲気が失われてしまうのではないかと恐れた。地下鉄の完成に合わせて大きな道を造ろうと工事がはじまり、家が立ち退いて家並が壊れ、傷跡みたいな空き地ができるようになったからだ。けれどもちょっと奥のほうに入ると、人通りも少なくちいさな古い家が、古い大きな木が、曲がった路地が、天然商店が残る町並みはあまり変わっていない。
池袋の駅からも歩いていける。ジュンク堂の裏、カフェや居酒屋なんかがあるところを通り抜ける。このあたりもとてもいいところである。すずめやという和菓子屋が特にいい。隣のそば屋にもときどき行く。下町のような雰囲気の路地が池袋の駅のすぐ近くにあることに驚く。
そこを過ぎると店のまばらな商店街がじょじょにレトロになっていく。30年ぐらい前の花柄の水筒をいまだに店先に置いている金物屋は、店が開いているのに午睡をむさぼるかのようである。10分も歩けば大勢のいそがしそうな人が右往左往する池袋の駅から、都電荒川線の走るひなびた景色へたどり着く。雰囲気の変化があまりに激しいのでどこでもドアを使って旅をしたような妙な感覚に陥る。