いなり寿司

projetdelundi2008-12-19

雑司ヶ谷二丁目商店街はしっとりとしている。住宅地のなかにあって、人通りも少なくて、店はどれも地味めで渋い。ざわざわした感じがなくていい。
古ぼけているばかりかというとそうでもない。とてもおいしいいなり寿司のお店があった。ごはんがよく炊けていて、おあげはジューシーで味付けがやさしい。太巻きも卵焼きが甘めで、華やかな味がする。2、3個買って歩きながら食べたらもっと食べたくなったので慌てて戻ってまた買った、それも、近所の雑司ヶ谷宣教師館という洋館の庭でピクニッケして親子三人でぜんぶ食べてしまった。
「開店したのは30年ぐらい前ですかね。3つぐらいの店で勤めたことがあったんですよ。そのたびにいいところをあっち盗みこっち盗みしてね」
夫婦で力を合わせて商売している店は、人ごとと思えずつい共感を覚える。奥のほうで奥さんがたくさん揚げ物ののったお弁当を作っていた。
「これで500円なんですよ」
という言葉にちょっとしたさびしさがあった。人の手で一生懸命作られたものがコンビニの大量生産品と変わらない値段なのである。でも、こういう店がなくなったら、下町を歩く楽しみも薄れるだろう。いつまでものれんを守ってほしいと思う。