デニッシュ

projetdelundi2009-04-02

『パニック7ゴールド』に過去6回連載した「パン・ラボ」史上、すべてのパンを並べ終わったときに巻き起こった参加者の歓声がもっとも大きかったと思う。なにしろ甘い香りが鼻をくすぐっているし、カラフルだし、形もバラエティに富んでいる。
選ばれたデニッシュはどれもこれもそのほとんどがさくさくで、期待にたがわないものだった。誰しもデニッシュを食べるときには無意識のうちにどれだけさくさくかを待ち構えている。
さくさくである時点ですでに大満足にはちがいない。しかし「パン・ラボ」というパンを研究する場である以上、パンとしてのデニッシュを見つめなくてはならない(などと誰に頼まれてもいないのに責任感を勝手に背負っている)。
ただ甘くてさくさくだったらいいのか? それはお菓子のパイでもいいんじゃないか。パイとデニッシュの境界線はどこにあるのだろうか。
バターを生地にはさんで層状にしているという点では二つは同じである。ちがうのは生地を酵母で膨らませているかどうかのちがいだった(調べたところによるとそうだった)。
デニッシュが大好きで、毎朝それとカフェオレが食べられれば人生はそれなりにハッピーとさえ思う私が、デニッシュに期待しているのは本当はなんなのか。さくさくであることに加え、弾力であり、表面のぱりぱりに反するような、中身のふかふかさであり、バターと小麦粉の織りなすわき上がる香りなのではないかと気づいた。それはつまりお菓子という以上にパンを食べたがっているということだった。これからはぱりぱり原理主義を乗り越えてデニッシュを食べるときにはあらゆる側面を味わい尽くしたい。そのことを教えてくれるおいしいデニッシュが今回も集まっていた。(4月中旬ごろ発売)