カトリック夙川教会

projetdelundi2009-04-15

『修道女スタイル』の関西篇で紹介した教会。
サーモンピンクの外壁とそびえ立つゴシックの塔、そしてアールヌーボー風の装飾が町の中で異彩を放っている。
遠藤周作を輩出していたり、信徒数の多さを誇っていたりと、カトリックの盛んな土地柄である。そのせいか町の中心近くに大きな顔をして堂々と建っていて、教会を中心に町が形作られるヨーロッパの都市をなんとなく彷彿させる。しかし、まわりはマンションが立ち並ぶ日本の近郊の姿に他ならず、そのミスマッチがちょっとした幻惑が感じられて楽しい。
撮影の日、幸運にも快晴に恵まれた。青空をバックにしていると外観も晴れるし、なんといってもステンドグラスがうつくしく撮れる。窓はきらめき、床やベンチに七色の光が落ちる。光は呼吸のようにある気配を持ちながら刻々と変わっていく。普段家にいてもそんなに外の光というのは意識されることがない。薄暗い教会でひとりしずかに長い時を過ごしていると、光に対する感覚が鋭敏になる。赤や青の光が強く淡く変化し、あるときは完全に途絶えて少し肌寒さを覚え、また急に雲が晴れ、眩しいような強さを回復する。太陽の明滅を感じることは、自然から切り離された感覚をまた自然のほうへ戻していくことかもしれない。
恐る恐るという感じで訪ねた教会もそうして過ごすうちに、違和感が消え、五感になじむようになってきた。きっと築77年にもなる古い教会であるからこそなのだ。新しい建物には匂いがある。ずっと置いておいたチョコレートがいつのまにか減っているように、建材も呼吸しながら余分なものをきっと吐き出していく。丸くなり周囲の環境と調和して、だから古い建物には人をなごませるようなものがあるのだと思う。
この建物の全景をどうしても撮りたくて教会のまわりをうろうろしたが、なかなか適当な場所が見つからない。そこで向かい側に建っているビルの屋上へ上らせてもらった(居酒屋さん、ありがとうございました)。手すりはないし、風の強い日で帽子が飛ばされそうになったり、ちょっとしたスリルだった。