神の島

projetdelundi2009-05-04

単行本『修道女スタイル』の中では、神の島へ長崎駅前からバスで行くことになっている。なぜ島にバスで行けるかとえば、海が埋め立てられ、陸続きになったからだ。
快晴の朝、長崎駅からバスに乗って、神の島行きのバスは長崎の湾に沿って進んでいく。川を渡って稲佐山のほうへ行き、それから三菱造船所のドックのそばを通る。巨大なクレーン、停泊する巨大な船。工場の門の中に通勤する人たちが次々と吸い込まれていく。
長崎湾をまたぐ大きな橋がある。海の向こうに長崎の町が見えている。大浦天主堂のあたりである。先週、「南山手」や「マリア園」というタイトルでアップしたときの写真で海の向こうに写っている陸地から今度は反対にカメラを構えているほうへ向けて見ていることになる。
トンネルをくぐると神の島にやってくる。埋め立て地を抜けかつての島へ。防波堤沿いにつづく道を歩いていく。東京では決して見ることのないエメラルドの海が広がっている。波もたたず海は静かなままだ。ただ沖を通る船のモーターの音だけがあたりに響いている。冬の日の雲ひとつない快晴、風もない小春日和の朝。釣りをする人、散歩をする老人。なんというのどかな一日だったろう。
長崎へは子供を実家に置いて出かけた。のんびりもしていられず、実質3日しかなかった。その前に長崎へきたときは始終雨が降っていた。撮影のためのこの旅行では3日のうち2日が快晴だった。『修道女スタイル』に、輝くステンドグラスの写真が載っているのは、この天の配剤のおかげである。教会で妻がシャッターを切るその横で、私は神様に感謝を捧げた。