大平作業所

projetdelundi2009-05-12

ド・ロ神父が建てた作業所の遺跡である。昨日の大野教会からさらに山の中に入ったところ。農地に事欠き困窮していた村を救おうとして、原野を買って開墾を行った。
といっても出津教会からかなりの距離山道を登ったところにあって、通うのも、生産物を運び出すのも簡単ではなかったと思われる。
こうした教会の廃墟に私は憧れていた。フランスの田舎にいくと打ち捨てられた教会がたくさんあるようで、そうしたものを巡ってみたいと思っていた。
外海に行って思いもかけず、ずっと空想していたような光景に出会った。
この遺跡には百年の時間が埋蔵されている。一方で人間は現在にしか生きられない存在である。石を積み、生きるために畑を耕し、祈る。この遺跡にきて想像力を働かせれば、現在を精一杯生き抜く行為が、神聖なものとして立ち上がってくる。百年というスパン=ほとんど永遠のような視点で眺めているからなのだろう。分厚い石の壁、煉瓦積みの堅牢さ。1世紀という時間を生き残った石と煉瓦に、ド・ロ神父と信徒たちの情熱、信仰の強さを見る思いである。繁茂した雑草が証人だった。