2007-01-01から1年間の記事一覧

庭という旅

庭園に行くとなぜ気分がいいかというと現実離れするからだ。 古河庭園では駒込から大正時代の薔薇の洋館へトリップした。小石川後楽園では、外濠通り沿いにある高層ビルの裏が大自然だった。塀ひとつ越えただけで別世界という体験にはかなりの眩惑がともなう…

飛び石

きのうのつづき。 川を渡り切ると林があり、そのなかを抜ける山道がある。 急な斜面は一歩ごとにわたしを地上から遠ざけ、さっき見た川の景色はバードビューとなる。 川のなかに散在する石もいまや上から見ている。あの現実離れした幽遠さが明るい魅力へと変…

西湖堤

いま発売されている『パニック7ゴールド』という漫画誌で十月のピクニッケの記事を掲載しています。 パニック7のホームページで写真は見ることができます。 下のほうにある「東京ピクニッケ」をクリックしてください。 皆さまのご意見お待ちしております。…

幽遠感

ふたたび小石川後楽園に行った。 十月の末にはまだ青かった入り口の枝垂れ桜がいまはすっかり枯れ落ち、縄のれんになっていた。 緑の絨毯がうつくしいスロープを描く築山を見ると段ボールを尻に敷いて滑り降りたくなる誘惑に駆られる。 その緑はよく見ると芝…

現実もどき

さきおとといのつづきの新宿御苑。 これは梅もどきという木である。 インクで染められたようにビビッドな赤色のまったく同じ大きさの球体が、数えきれないほど増殖している様子を見つめていると、頭がクラクラする。 自然とは思えないほど3Dのコンピュータ…

JPHへの質問

きのうのつづき。伊勢丹デパ地下グルメ。 吹きすさぶビル風の中、今回の撮影は困難を極めた。 クロスもチョコレートケーキのココアパウダーもパン屑もすべて吹き飛んでセッティングは幾度となく台無しにされ、妻のOKが出たのは何カット目であっただろうか…

伊勢丹の空

エレベーターのドアが開くと眼前に緑が広がっていた。 ここは本当にデパートの屋上なのだろうかと一瞬現実から隔たってしまうほどよくできた庭園である。 植木と、その下生えにはすすきや萩など草花が配され、先日の向島百花園をちょっと想起させる和テイス…

鈴懸

きのうのつづき。 フランスに目がないわたしと妻は[フランス式庭園]という文字に吸い寄せられた。 新宿御苑を新宿門から入るといちばん奥の四谷寄りにある。 フランス式庭園へ行くには[イギリス式庭園]を通り抜けなくてはならない。広い、広い芝生に人々…

拍手

新宿御苑に行った。 園路の先、木々の隙き間に黄金色の色彩が現れた瞬間、目を奪われた。 葉を黄色く染めた巨木が青空を突き、自ら発光するように輝いている。 樹は近づくにつれじょじょにその偉大さを明らかにしていった。 高さは他の木を圧している。近づ…

ガナッシュとアルミニウム

まっすぐの坂よりカーブした坂がいい。 山の手と下町という言葉があるように、坂の上と下とでは世界が変わる。 先へ進むとなにかおもしろいものと出会うのではないかという予感に急き立てられながら、見通しのきかない坂を、胸と息を同時に弾ませながら登っ…

枝垂れ桜

小石川後楽園の枝垂れ桜。 これだけ大きな、幅2、30mはある桜の木が満開になったらどれだけ壮観だろう。桜の季節のピクニッケは一本桜もいいかもしれないと思った。 ちょっと前の写真なのでいまはもっと紅葉が進んでいるだろう。 紅葉というのはすべての…

個人美術館への旅

アート鑑賞も現実から離れることである。 最高の作家のものに触れたときにはそう感じる。 作品の周囲の空気がちがっている。 磁場が緊張し、ひんやりしている。 作家の精神のありようがそこに現れているからだろうか。 世界の新しい法則を告げているようにす…

ルコント

きのうのつづき。 青山ツインタワーにあるブラッスリー・ルコントでお惣菜をテイクアウトし、アールヌーヴォーベンチで食べた。 風景だけではなく、口の中までパリになった。 どれを口にしても素敵な芳香が充満するので即座においしいと思える。 キッシュ。…

パリのおさんぽ?

パリのおさんぽblogを名乗りながら東京23区から一歩も出ない話題ばかりで、忸怩たる思いを抱いてきた。しかし、きょうばかりはその名にふさわしい話題をお伝えできそうである。 といっても、ピクニッケした先はセーヌ河畔ではなく、神宮外苑のイチョウ並木。…

エコール・クリオロ

最近雑誌でよく見かけるフランス人オーナーシェフの洋菓子店エコール・クリオロは、ごく平凡な豊島区的住宅街の一角にある。 写真の左側はマルティニックというチョコレートケーキ。チョコレートはどこまでもビターで、カカオの香りはなかなか出会えないほど…

犬の鳴き声

今日も息子の虎太郎(8ヶ月)と公園へ行った。 隣りの家で犬が鳴いていた。アオーッ、アウアウアウ、アオーッと鳴く犬だった。 わたしは犬のものまねをしてみせた。アオーッ、アウアウアウ、アオーッ。「ワンワン」じゃなくて、恥ずかしいぐらいの本格もの…

渦巻き

エルブリのシェフパティシエを務めたオリオール・パラゲのチョコレート店が白金台にある。 間接照明の薄暗い空間ではプロジェクターによって白黒の渦巻きがぐるぐると壁に投影され、怪しい趣きである。 黒トリュフやオリーブオイルやサフランなどフレーバー…

白金台どんぐり児童遊園

きのうのつづき。 ここは果てしなく空地に近い。 ただ芝生の貼られた空間が青空とともに空漠として広がっている。 空地好きにはたまらない公園である。 数組のシロガネーゼとそのご子息たちがビニールシートを持ち寄ってピクニック活動にいそしんでいた。(…

現実から遠く離れて

人間の顔が落書きされたホワイトボードと壁の隙間に、子供が挟まっている。 どうしてそんなところにいるのか。 かくれんぼだったら足が見えるところには隠れない。 わたしも子供の頃はよく隙き間に入り込んでいた。 そのときの気分を思い出してみると、かれ…

新企画

U君へのメール いままで歴史散歩に興味なかったっていうのは単なるトリビアだと思っていたからなんだけど、江戸時代(とか他の時代)の感受性になって街を見るとすごく想像力が発動してくる。 いまの東京のなかで江戸と変わらないものってなんだと思う? 花…

猫の逡巡

うちの隣りに空地がある。 古いビルが破壊されたあと更地に戻され白砂が敷き詰められた。 そこに黒い猫が居着いている。 かれは空地のまんなかあたりのお気に入りの場所にいつも寝そべっている。 わたしの部屋がある6階の踊り場から見下ろすと、白い砂と猫…

アルプス洋菓子店

旧古河庭園でケーキを食べる話。 駒込のアルプス洋菓子店といえばシュークリームやロールケーキなど昔ながらのケーキが有名である。 けれど、フランス帰りの若社長が創意したモダン路線も秀逸だ。 ジャージー乳の生クリームを使ったムースオショコラがおすす…

秋の標識

『沖縄のおさんぽ』を作るために那覇へ行ったのは確か11月の後半からだったと思う。 東京ではとっくに秋だが、沖縄では晩夏の気色から本格的な秋へと移ろっていく頃である。 1週間前に通った空地の前を再び通りすぎると、以前にはなかったすすきが茂ってい…

きのうのつづき。 後楽園の入り口に蓮池があった。 入ってきたときには季節外れに感じられて気にも留めなかったのだが、帰りには太陽の光を正面から受ける形になり、趣を一変していた。 池の水面に反射した光によって黄色く輝く蓮の葉。 自然はうつくしい。 …

台風一過

十一月のピクニッケは紅葉がテーマ。 紅葉のきれいな場所を探してきょうは小石川後楽園に行った。 台風が大気中の塵をいっそうしてくれたおかげでとてもきれいな光が降り注いでいた。 どこに目をやってもあらゆるものがうつくしい。 池に反射した光が水辺の…

出窓からの風景

また旧古河庭園の話。 写真では左側が切れてしまっているが、右の棟と左の棟をアーチとその上のバルコンが連結している、この屋敷の南側の姿がわたしは好きだ。 設計者のジョサイア・コンドルはもっともよく薔薇の見える2つの部屋を応接室と夫妻の寝室にあ…

木々の向こう側

また旧古河庭園の話。 丘を降りると日本庭園がある。 林のなかに渓流が流れている。 川を越え、木々のあいだを抜けると、視界が開ける。 池があって、松やもみじが水面に枝を差し出している。 中之島へと石橋を渡る。 池をめぐる沿路に置かれた飛び石がリズ…

居着き猫

きのうにつづいて旧古河庭園の話。 日本庭園の奥、木々に隠れた広場に猫がいる。 二度行って二度ともここにいたから居着き猫なのだろう。 もう老人なのか、草むらに半分身を潜めるようにしながら地面に座り込み、目を瞑っている。 「おいで、おいで」と手を…

カトリーヌ・ドヌーブ

きのう、11月中旬発売の『パニック7ゴールド』に掲載される『東京ピクニッケ』の撮影で、駒込の旧古河庭園へ行った。 どの薔薇も、2週間前訪れたときはつぼみに近かった花びらが、いまは散り落ちそうなほど広く開いて大輪になっている。 写真のなかの薔薇…

言問団子

在原業平が隅田川に着いたときに詠んだ有名な歌(「名にしおはばいざ言問はむ都鳥我がおもふ人はありやなしやと)に出てくる都鳥の正体は、川伝いに海から浅草までやってきたかもめである。 いまでも言問橋を渡ると街灯の上で悠然と川の流れを見つめていて、…